医薬品会社社長の自伝
都内の一等地に自社ビルを持つ中堅企業社長の自伝です。企業30年説という話があり、企業の寿命は30年に過ぎないといわれています。しかし、この企業は社長のアイディアで50年を迎え、記念として社史とともに社長の自伝を作成することになりました。その執筆に私が起用されたというわけです。
東京生まれ東京育ちの社長。親の代からの経営者で2代目のボンボンとして、何苦労することなく育っています。医薬品ですから、理系の企業です。しかし、社長は早稲田の政経を出ている文系の人間でした。
大学を出てからメーカーを経て、親の経営する会社に入社したのですが、現実に驚きました。倒産寸前といえるほど、経営が傾いているのです。そんな会社ですから、仕事もありません。
ここで、2代目がやらなければならないのは、新しい飯の種を見つけることでした。もちろん簡単なことではありません。
机の上で考えてもアイディアは浮かびません。そこで大学時代の友人の医薬品企業を訪れてみました。友人から「困っていることがある。これを解決する機械があれば助かる」と言われます。薬の錠剤の加工技術でした。
これは需要があるかもしれないと考え、社長は古巣の技術者を訪ね、製造方法の工夫を求めます。ここでその友人と二人で、知恵を絞り、工夫を重ね、新しい機械の構想を得ることができました。
これを医薬品企業の友人に語ると、「それは興味深い、できたらぜひ見せて欲しい」といわれます。
徹夜を重ねて、新たな機械を製造。その機械を持ち込んで実験し、採用が決まりました。
会社はこれで再生しました。
こんなことを社長はもちろん、数人の社員からもヒヤリングし、物語としてまとめました。半年ほどかかる作業となりました。物語としては大変面白いものになりました。