怨みつらみを自分史で昇華

自伝・自分史・自叙伝の仕事を始めて意外だったのは、恨みやつらみ、暗い過去を本にしてしまおうと考えている人が多いことです。「つらい思い出を書くことで、それから切り離されたい」「発表するわけではないが、書くことがデトックスになる」と依頼者は語ります。そして、「自分で書くのはしんどい」から私のようなライターに代筆をお願いするようです。
同時にその重要性にも気づかされました。暗い過去を、いつまでも一人で抱えていても、辛くなるだけ。本にしてデトックス、さらには昇華し、新たな人生を歩もうとされる方が多かったのです。

その方は関東近県に住んでいますが、都内某所で2回会いました。お客様の方から、上京してくれたことになります。金融機関に勤めている、50歳代の女性の方でした。
昇進が遅いのが不満で、その銀行に恨みがあるようです。
大学を卒業し就職したのですが、常に同僚よりも昇進が遅れる。上長が不思議に思って掛け合ってくれるのですが、銀行側は試験制度を盾に決して譲歩しようとしません。
結局52歳という最後の昇進の機会を失い、平のまま定年まで勤めることになりました。

これら、銀行であったことをいろいろ書き連ねました。
といって、長い話ではありません。30ページで簡易印刷30部。予算にして30万円ほどの作業でした。その自分史をどのように使うのかまでは確認していません。ただ、内容には満足しているようでした。自分史がお役に立つといいのですが……。